小説には書けないあれこれ

小説家・蓮華のブログです。触れた作品や文学・小説・音楽・アートなどについて考えたことを書いていきます。

心を震わせる詩的な歌詞と音楽のおすすめランキング(女性アーティスト・邦楽編)

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https://natalie.mu

この記事では、私にとって「詩的な歌詞」を歌うアーティストを選りすぐり2019年時点のランキングを作った。今回は女性アーティストに絞っている。

大きくは次の2つを満たすものを「詩的な歌詞」と呼ぶことにしている。

  • 歌詞に強い個性と世界観があり、言葉の選択の妙があるもの
  • 歌と楽曲がその歌詞の世界をひろげているもの

基本的に歌詞を見ているが、どんな歌と楽曲に乗っているかももちろん大切、という意味だ。また、次のルールを敷いた。

  • 1990年代以降に活躍したJ-POPアーティストから選ぶ。
  • 自分で歌詞を書いている=シンガーソングライターから選ぶ。
  • 新しいものには甘く、古いものには厳しく順位づけする。

順番をつけたのは、私にとって詩とは何かがその順番に現れると思ったからだ。たとえば、JUJUやMisiaはこのランキング内には入っていない。ランキングは好きなアーティスト順ではないし、よく聴いている順番でもない。「泣ける音楽」かどうかでもない。

「歌詞が素晴らしい曲」と言われたり「深い歌詞」または「心に響く歌詞」と言われる音楽を集め、その中でも特に、詩のようだと思う音楽をいまの気分で選んだ。1ヶ月後にやれば変わるかもしれない。そういうリストだ。だが、心を揺さぶるという意味で感動する名曲ばかりを選んだつもりだ。

知っているアーティストでも、ぜひ一曲目だけでも聴いてみてほしい。がらりと印象が変わるのではないかと思う。

 

では、10位から順番に。以下、敬称略。

 

10. 椎名林檎

椎名林檎はやはり歌詞に特徴があり、詩的な音楽も作るアーティストだ。ときおり歌詞を捻りすぎる嫌いがあるが、彼女はまっすぐに歌っているくらいがちょうど良い。シングルリリースされている『罪と罰』や『ここでキスして。』ほどマイルドにチューニングされると歌とともに一気に世界が開く。 

最近の音楽では、より自己主張が無くなって『長く短い祭』のような音楽も椎名林檎的な世界観を広げている。

椎名林檎 - 長く短い祭

天上天下繋ぐ花火哉
万代と刹那の出会ひ
忘るまじ忘るまじ忘るまじ我らの夏を

ちなみに、私の短編小説『天上の花、地上の月』は『長く短い祭』を聴いてイメージが膨らみ、書きはじめた。後で必ず読んだほうがいい。

 

椎名林檎 - ここでキスして。

あたしは絶対あなたの前じゃ
さめざめ泣いたりしないでしょ
これはつまり常に自分が
アナーキーなあなたに似合う為
現代のシド・ヴィシャス
手錠かけられるのは只あたしだけ

 

椎名林檎 - 罪と罰

不穏な悲鳴を愛さないで
未来等 見ないで
確信出来る 現在だけ 重ねて
あたしの名前をちゃんと呼んで 身体を触って
必要なのは 是だけ 認めて

 

9. 川本真琴

川本真琴といえば『1/2』や『桜』の印象が強いかもしれない。だが『微熱』や『ピカピカ』の方が彼女の詩の才能が強く出ていると私は思う。誰もが感じたことがあるだろう夜空を見上げたときの広大で孤独な宇宙と、その下にいる「あたし」と「君」の距離。この世界観を表現できるのは川本真琴ならではだ。

裸で広い宇宙に いつも君と浮かんでる
なにも育てず 傷つくまるでそれで1コの生き物のように

こぼれ落ちる強い発熱
1000000回目の太陽 昇っても
哀しい 哀しいね とけない微熱

 

川本真琴 - ピカピカ LIVE

ビロード色のギザギザ前髪 やわらかな光ふってきた
あたしたちいつも つまみ出されてた 同じ月の下
チョコレイトのサラサラ銀紙 唇にあててキスした
あたしたちまるで 二匹みたいだね 緋の月の下

 

1/2 Makoto Kawamoto

見えなくなるほど遠くに
ボールを投げれる強い肩
うらやましくって
おとこの子になりたかった
澄んだ水のようにやわらかく
誰よりも強くなりたい
ちっちゃな頃みたい
へんね涙こぼれてく

バイバイのキスするから
最後の一歩の距離 ぐって抱いて
太陽がずっと沈まないように

 

8. LOVE PSYCHEDELICO

ラブサイケデリコは洋楽とも邦楽ともつかない新しい音楽を作り出したアーティストだ。日本語と英語の組み合わせが異次元に上手い。「夢で会う」「愛」「miss you」は頻出ワードだ。夢で会いがちな彼女だが、どこか懐かしい向こう岸に連れて行ってくれる。

LOVE PSYCHEDELICO - Beautiful World (Short Version)

静寂を胸でこらえてる
Lullaby for you 風にのって
その愛の向こう take you there

Baby, feeling
This beautiful world

 

LOVE PSYCHEDELICO - Last Smile

静寂を胸でこらえてる
Lullaby for you 風にのって
その愛の向こう take you there 

 

Love Psychedelico - Your Song

oh sing it to me
oh sing it to me your song
悲しみが呼んでる

 

LOVE PSYCHEDELICO Live Tour 2017 -LOVE YOUR LOVE-

 

7. Chara

「愛でも何でもキスでもいいから色々してたいわ」という歌詞が書けるとしたら川本真琴か彼女だろう。

Charaの音楽は、歌詞は飛びすぎないのに遠くへ連れていく力がある。『Swallowtail Butterfly』のようなシンプルな歌詞が、彼女の歌で世界を開いてしまう。

Chara 『やさしい気持ち』

なけない女のやさしい気持ちを
あなたがたくさん知るのよ

手をつなごう 手を ずっとこうしていたいの
手をつなごう 手を ずっとこうしていたいの

愛でも何でもキスでもいいから色々してたいわ 

Chara「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」

あなたは雲の影に
明日の夢を追いかけてた
私はうわの空で 別れを想った
汚れた世界に 悲しさは響いてない
どこかに通り過ぎてく
ただそれを待つだけ
体は 体で 素直になる
涙が止まらない だけど

 

6. Aimer

最近のアーティストの中でも、その七変化ぶりに期待してしまうのはAimer(エメ)だ。彼女の歌は詩のようだ。後天的に取り替えができない素養を持つ稀有なアーティストだと思う。

逆に、彼女が書く歌詞はまだ、詩からは遠い。だが『蝶々結び』のような説明くさく比喩に引きずられた歌詞を書いていた頃から一枚も二枚も彼女は脱皮してきた。

Aimerをランキングに入れようと思ったのは彼女が『Black Bird』を書き、歌ったからだ。

Aimer 『Black Bird』MUSIC VIDEO 映画『累-かさね-』

すぐに堕ちていきそうだ
まるで一人のステージ
まっ暗闇で声を枯らすよ I cry

きっと空の飛び方なんて
誰も教えてくれなかったよ
まっさかさまに海の底へ I fall

愛されるような 誰かになりたかっただけ

 

Aimer 『カタオモイ』MUSIC VIDEO

今日がメインディッシュで 終わりの日には甘酸っぱいデザートを食べるの

好きだよ 分かってよ 分かってよ

 

Aimer 『Torches』MUSIC VIDEO(8/5先行配信!「ヴィンランド・サガ」エンディングテーマ)

Listen to me
Sail away again
未開の海に 海路を照らす願い
繋いだ声は 答えのない世界へと 帆を揺らす
You're not alone
ただ 荒波を征け その闇を抜け

 

Aimer 『I beg you』

憐れみをください
落ちた小鳥に そっと触れるような
悲しみをください
涙汲んで 見下ろして 可哀想だと口に出して
靴の先で転がしても構わないわ
汚れててもいいからと 泥だらけの手を取って

 

Aimerの書く歌詞が詩になるためには、彼女はアニメソングから離れないといけないと私は思う。

『I beg you』はアニメ『Fate/stay night』の主題歌であり、『Torches』はアニメ『ヴィンランド・サガ』の音楽だ。先の音楽を聴いた人は、知らなくてもアニメソングだという感じを受けたのではないだろうか。この音楽の幅自体は彼女の可能性を広げたと思う。だが、私は、たとえ売れるとしてもAimerはそろそろアニメのタイアップソングから離れた方がいいと思う。

ファンタジーとは、詩をもっとも遠ざけてしまうものであると私は思う。なぜならそれは詩であったものを見える形にしてしまったものだからだ。そこには、詩の影と残骸しか残っていない。

彼女は三歩進んで二歩下がる。すこしずつ可能性を広げていく。もしも彼女がファンタジーの想像力から抜け出すことができれば、それこそ想像を超えた歌を唄ってくれるだろうと思う。

 

5. あいみょん

あいみょんの歌は「君」という呼称が多い。この言い方には少なからず「男」のニュアンスが入ってくる。それでいて、少し距離を置いてあらたまる感じがある。近づきすぎて傷つくのを避けているような微妙な距離感だ。トモダチにも近い、男女の距離感。だが、近づきたいという気持ちをうかがわせる距離でもある。

あいみょん - マリーゴールド【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

麦わらの帽子の君が
揺れたマリーゴールドに似てる
あれは 空がまだ青い夏のこと
懐かしいと笑えたあの日の恋


目の奥にずっと写るシルエット
大好きさ
柔らかな肌を寄せあい
少し冷たい空気を2人
かみしめて歩く 今日という日に 何と
名前をつけようかなんて話して

マリーゴールド』は、男性視点で歌詞が書かれているが、この歌詞はむしろ女性から男に「君」と呼んでいるように錯覚して聴こえる。むしろ男性像は透明で、枠で切り取られたように空白でいる。これほど男性目線であるが、男性のことを歌わないのだ。そこに、各々の「君」を当てはめられる。 

 

あいみょん - 愛を伝えたいだとか 【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

とりあえず今日は
部屋の明かり 早めに決してさ
どうでもいい夢を見よう ah

愛を伝えたいだとか
臭いことばっか考えて待ってても
だんだんソファに沈んでいくだけ 僕が

結局のところ君はさ どうしたいの?
まじで僕に愛される気あんの?

 

あいみょん - 満月の夜なら 【OFFICIAL MUSIC VIDEO】

もしも 今僕が
君に触れたなら
きっと止められない最後まで

溶かして 燃やして 潤してあげたい
次のステップは言わずもがな分かるでしょう

 

4. UA

UA(ウーア)という言葉には、スワヒリ語で「花」と「死」という2つの意味があるらしい。彼女もまた詩の塊のような言葉を吐き出し続けている。

『波動』はAJICO時代のもの。AJICOベンジー浅井健一)と結成したバンド(エグい組み合わせだ)で、一年で活動休止したが素晴らしい音楽をつくっている。

AJICO / 波動 (Live)

街の孤独をかばって君はいう
胸の落書き 無理に消さないで

さぁ踊ろう 凍える肩に口づけを
ラララ 悲しみだけあおいだ空
もしも愛がまだ足りないのなら
私は海を飲み込む

 

悲しみ深く海より深く
心にトゲを埋めても
ふしだらな幸せは全部あげる
萎えた鳩はびしょぬれ

悲しみジョニー
愛を亡くして
心に傷を隠しても
憧れはママの甘い子守唄

 

3. 一青窈(ひととよう)

一青窈の言葉選びは天才的だ。デビュー曲の一言目で「ええいいああ」と書きつけるセンスは日本語だけで暮らす環境ではちょっと生まれてこなかったかもしれない。

『かざぐるま』は知らなければぜひ聴いてほしい。演歌を思わせるが、その歌唱力もふくめて寒気がしてしまう。

Hitoto Yo - Morainaki (Original video) もらい泣き / 一青窈

ええいいああ 君からもらい泣き
ほろりほろり ふたりぼっち
ええいいああ 僕にももらい泣き
やさしい、のは 誰です。

 

一青 窈 かざぐるま

あれは十四、五のほのか照れ隠し
ふたりで歩こうと決めた
川ではないけど

ただとおりすぎただけ
君がまわるためどこ吹いた風でした
くるりかざぐるま

 

一青窈 - ハナミズキ

どうか来てほしい
水際まで来てほしい

君と好きな人が
百年続きますように

 

2. 宇多田ヒカル

宇多田ヒカルが素晴らしいのは、恋愛の曲を歌っていてもそれがただ単にバラードとしてよりもっと広いものを歌っているように聴こえるところだ。『初恋』はもはや、初恋自体を歌っているというよりも、人生の儚さを歌っているように聴こえる。

それはおそらく、彼女の天性の歌が詩のようだからなのだと思う。 

宇多田ヒカル 『初恋』(Short Version)

うるさいほどに高鳴る胸が
柄にもなく竦む足が今
静かに頬を伝う涙が
私に知らせる これが初恋と

 

宇多田ヒカル - 真夏の通り雨

思い出たちがふいに私を
乱暴に掴んで離さない
愛してます 尚も深く
降り止まぬ 真夏の通り雨

若い頃に作った『COLORS』の歌詞は「色」にこだわりすぎていて陳腐な部分も目立つが、彼女はそれを天性の歌で詩的にしてしまう。同様に『traveling』なども楽曲としては入れてもよかった。

宇多田ヒカル - COLORS

青い空が見えぬなら 青い傘広げて
いいじゃないか キャンバスは君のもの

カラーも色褪せる蛍光灯の下
白黒のチェスボードの上で君に出会った

 

1. Cocco

詩のような音楽を生み出すアーティストとしては、Coccoは一人だけ違う次元にいる。

彼女の歌はいつも、身近な人のことを歌っているのに世界のことを歌っているように聴こえる。世界は残酷で、哀しい。それを細く折れそうな身体で一身に引き受けるように歌う強い姿が、私たちの心に傷を残す。

Cocco自身が詩のような存在だからかもしれない。この先、彼女を超える詩を唄えるアーティストは出てこないのではないかと思ってしまう。

 

Cocco - Raining 【VIDEO CLIP SHORT】

白い服で遠くから
行列に並べずに 少し歌ってた
今日見たく雨ならきっと泣けてた

帰り道のにおいだけ
優しかった 生きていける
そんな気がしていた
教室で誰かが笑ってた
それは とても晴れた日で

 

Cocco - 強く儚(はかな)い者たち  【VIDEO CLIP SHORT】

固い誓い交わしたのね
そんなの知ってるわ
あんなに愛し合ったと
何度も確かめ合い
信じて島を出たのね

だけど 飛魚のアーチをくぐって
宝島に着いた頃 あなたのお姫様は
誰かと腰を振ってるわ

人は強いものよ とても強いものよ

 

Cocco 「有終の美」 Music Video+メイキング

美しいものばっか
差し出してみんな消えた
お日様も 雨粒も

汚れたスカート
ひるがえして
胸張って行くよ

 

Cocco - 樹海の糸 【VIDEO CLIP SHORT】

悩める胸に あなたが触れて
雨は 終わると想った
だけど誓いは あまりに強く
いつか張り詰めるばかり

永遠を願うなら
一度だけ抱きしめて
その手から 離せばいい

 

 


選外編 

ここからは選外編として、ランキングには入らないが詩的な音楽として光るものを感じているアーティストを載せた。必然的に、新しく登場してきたアーティストたちになる。ランキング内の人たちと比べるとやはりまだまだ個性が弱い。だけど、この先に期待をして応援したいと思えるような音楽ばかりだ。

 

吉澤嘉代子

歌詞は上手い。だが、出来上がった作品がぜんぶ似ている。

彼女の曲は、散文的すぎるのかもしれない。同じ作家の定番シリーズ小説を読んでいる感じがある。好きな人はすごくハマるんだろうけど、広さが無い。アルバム『女優姉妹』を聞いていても、邦画的というか、暗くて、閉じている感じがする。

声自体が睡眠作用が強くてまどろみ感がある点は、松任谷由実と似ているのかなと思う。ユーミンのように、声に居座らないで幅広い楽曲に乗せるようになると、すごく変わりそうな気がする。

吉澤嘉代子「残ってる」MUSIC VIDEO

一夜にして
街は季節を超えたらしい
まだ あなたが残ってる
からだの奥に残ってる
ここもここもどこかしこも

 

日食なつこ

日食なつこの最大の武器はピアノが歌うことだ。そして最大の弱点はそのピアノを、本人の歌が超えられないことだ。歌がピアノにくらべて単調すぎて色気がない。弾き語りの限界なのか。そこさえ越えれば、すごいアーティストになる気がする。

歌詞は、音というか感触が残る言葉を選んでるだけであんまり考えてないと思う。それだけだと弱かったんだけど、『white frost』はそこから先を期待させるものがある。

日食なつこ「致死量の自由」11th MV

初めての自由で僕ら浮かれていただけなんです
知っていたら望まなかった

果てなき自由は致死量の猛毒だった
それでも欲しかったんだ
そう叫んで飲み干したのさ

 

日食なつこ「white frost」12th MV

君と青い空と白い雪は
どうかそのまんまでいてくれ
押しのけ合うこの町で灰になるのは
僕だけでいいんだから

 

青葉市子

彼女の音楽は、詩的な感じに聴こえる。だが、それは「アコースティックギターの弾き語りって詩的だよね」以上のものではない。つまりアルペジオが詩的なだけだ。作っている世界が小さすぎる。

おそらくジブリのアニメや音楽の影響をモロに受けているのだと思うが、宮崎駿は人間が恐れて寄りつかない自然を描いてきたわけで、人間の都合にいいところだけ切り取られた人工的なやさしい森に詩は住まない。

不思議の国のアリスからメルヘンの雰囲気だけ抜き出してそこにあった狂気を無かったことにしてる感じだ。

その森からはそろそろ出てきた方がいい。

青葉市子 - 月の丘

呼ばれた人は たやすく登れてしまう
月の丘 あの子はまだ
わたしたち 幾つも約束をしたまま

 

青葉市子 - いきのこり●ぼくら

雨雲の灯りで瞳をつないで
ようやく辿り着いた ここは大きな日本家屋
長いトンネルを抜けるまで 怖かったよね
ほっとして 座り込んだ

 

中村佳穂

中村佳穂はなにかすごい音楽を作るんじゃないかという期待感がある。センスというよりも反骨心で音楽を作っている感じがなぜかする。その分、遠回りしている感じも。ずっとシンカーを投げてる感じ。

歌詞はまだ心に響かないけど、書けそうという期待感がある。だが、まだ期待感だ。

Kaho Nakamura - Kittone! [Official Music Video]

 

竹内アンナ

歌は良いんだけど、なにより歌詞が超絶劇的にダサいのが残念。個性がどうのと没個性的。デリコと比較すべきではないんだけど、あらゆる点でちょっとセンスが無い。でもこの先にいろんな経験をしていくなかでとてつもなく詩的に変化する可能性があるかも。カテゴリ違いなのかもだけど。あとなんかDAOKOとかぶる。

竹内アンナ Anna Takeuchi / Free! Free! Free! (Official Music Video)

街を彩る nameless star
よそ見はしない it's who we are
人と違うことしたい? そもそも同じじゃない
うつむくわたし show window
慣れないヒールどうなんの
似合う似合わないなんて自分次第なんじゃない?

 

DAOKO

唯一「おや?」と思った『打上花火』が米津玄師の作曲作詞という。好きなんだけど、それ以外があんまりパッと光らない。

DAOKO × 米津玄師『打上花火』MUSIC VIDEO

パッと光って咲いた 花火を見てた
きっとまだ終わらない夏が
曖昧な心を 解かして繋いだ
この夜が続いて欲しかった

 

以上が選外アーティストだ。

吉澤嘉代子や青葉市子を聴いていて思うのは、小品志向というか、作品群をひとつの世界に閉じようとする傾向が強いのかなと思う。歌と楽曲の幅が狭いのだ。世界観は作りやすいのかもしれないが、その分、イメージが固定化してしまう。彼女たちのもっと違う面を引き出されたが作品が聴きたいと思うのは私だけではないと思う。

 

ここまでで上がっていなければ、私が知らないか、ルールで弾かれたか、詩的ではないと判断した。

リストアップしていく中で苦しんだのは、世の中で「いい歌詞」とか「文学的」と言われているアーティストの歌詞は、詩的ではないものが大半だということだった。なんちゃって詩人もまた多い。

  • 家入レオ:別に詩的ではない。直接的。カテゴリ違い。ストレート使い。好きだけどね。
  • miwa:別に詩的ではない。直接的。カテゴリ違い。ストレート使い。好きだけどね。
  • 黒木渚:詩的に見せようと頑張っているがセンスが無い。文学(笑)的。歌も情緒無い。カテゴリ違い。ヴィジュアル系ポップと言うべきか。大塚愛とかぶる。好きだけどね。

 

補足:「詩的」かどうかの水準

詩的とは何かのわかりやすい基準になると思ったのは、吉田美和Dreams Come True)だ。

彼女は、情景描写がとても上手い。基本的に恋愛のことを歌っているのだが、そのシーンの設定を間接的にしてすべてを歌わない。それでいて「愛してる」を重すぎず軽すぎず使う。ストレートとカーブの両方をうまく織り交ぜる。彼女の歌がそれを可能にしている。

たとえば『サンキュ.』は失恋を歌っているが、「彼」と別れた直後に「あなた」が会ってくれたという歌だ。「彼」との別れのことをなかなか言い出せない様子や、それをベタベタと言葉で慰めるのではなく、ただ一緒にいてくれるという絶妙な情景描写がされる。ちゃんと”言い残し”してあるのだ。「あなた」は友達なのだが、私には男友達に聴こえた。もしかしたら「あなた」は実は恋愛感情を持っているのかもしれない。そこまで想像させる言い残しがある。 

何も聞かずに
つきあってくれてサンキュ
季節外れの花火
水はったバケツ持って

えらかったね って
あなたが言ってくれるから
ポロポロ弱い言葉
こぼれてきそうになる
好きだったのにな
言っちゃった後 泣けてきた
また涙目のあなたを見て
笑って泣いた

 

DREAMS COME TRUE - 「朝がまた来る」

同じような一日が今日も始まる
となりの人が空見上げて舌打ちする
巨大な交差点に傘が咲いていく

雨だって晴れだって
願いは届かない
あなたのいない朝は来るから
今は 信号が変われば流される
思いよ 逝きなさい

 

この吉田美和の音楽が、詩的かどうかで並べていくとランキング10から外れる。

吉田美和の音楽は「共感」を軸にしている。特別なジャンプをしていないように見せて多くの人に共感を生む。それが彼女のすごいところなのだが、このランキングに入っている人たちはその「共感」を一足飛びに超えてしまう。備わった感性とも言える。

吉田美和ですらランキングに入らないのだから、西野カナaikoMisia平原綾香、JUJU、絢香はもちろん入らない。そういうランキングではないというだけだ。ただ単に、カテゴリが違うということになる。JUDY AND MARYYUKIは入りそうだが、川本真琴と比べたときに少し物足りなかった。

単に作詞が上手いということを超えて、その歌その音楽自体が一つの詩のように、私たちを感動させる。そういう音楽を集めたかったのだ。

 

ランキングを作ってみて 

私がこのランキングをいま作ろうと思った理由は、最近、詩的な歌詞をもつ音楽が次々と生まれるような傾向というか、うねりのようなものを微かに感じているからだ。

2000年前後のJ-POPはよく「あの頃は凄かった」と言われる。私は今回、ランキング内と外との個性の差を見て、それを否定できなかった。若手アーティストをランキング内に押し込もうとして、だいぶ肩入れした。だが、やはり詩的な歌詞が書かれなくなった空白のような期間がたしかにあり、掘っても掘っても見つからなくて苦労した。

それは音楽の流行り廃りの話だ。J-POPもまた一つのジャンルであり、詩的な歌詞というのもジャンルとさえ言えない当時のブームの一つだ。

そもそも私は小説家で言葉を扱っているが、音楽を聴くときに歌詞はあまり気にならない。Aviciiが好きだった(彼が死んだのを知ったときは心臓が絞られたようで強い喪失感を抱えた)が、それは彼の英語の歌詞が沁みていたからという理由ではない。ヤバイTシャツ屋さんを聴きながら首を振っているときもある。歌詞がよかろうが悪かろうが有ろうが無かろうが、良い音楽は星の数ほどにあり、だからこそ国境を超えて私たちは音楽に親しむことができる。 

それでも、言葉には、私たちの心を直に打つ力がある。歌と歌詞は切っても切り離せない。この楽曲この歌であったからこそという音楽があるのと同じように、この言葉であったからこそという音楽がある。

私はそのことを詩のような歌詞の音楽を聴くたびに思い出すし、そういう音楽を知ると誰かに教えたくなる。

この記事を読んで、一つでも詩のような歌詞とその音楽に出会えたと思ってもらえると嬉しい。

 


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天上の花、地上の月 (民明書房)

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